さくまの家通信 第4回 2015年8月10日


お久しぶりのさくまの家通信です。

すこし前のお話ですが、実はこの春、さくまの家では初めての満床を体験しました。

今回はこのお話と、とても印象深い入居者の方のお話をさせて頂きます。

庭の家庭菜園に野菜を植えてみました。

究極のプラス思考、出前大好きふじえさん


4月初旬から一か月半程、ふじえさんという90代女性にご入居いただいたのですが、実はさくまにとって、とても思いで深い方なのです。


今から10年以上昔のナース時代の事です。

三鷹中央病院の付属の訪問看護ステーションで働いている際、担当した男性の患者さんが食道癌になられ、最期はご自宅で亡くなられたのですが、この際の奥様が今回ご入居されたふじえさんです。

ふじえさんのご主人は私にとって初めての看取りを経験させて頂いた大変思い出深い方でした。

ご主人が亡くなった後も、ふじえさんとはたまに連絡を取り合い、ご自宅に遊びに行ったことなどもありました。

当時さくまが出入りしていた病院が、ふじえさんのかかかりつけで、よく顔を合わせる事があったのです。


ここ数年はあまりお会いすることもなく、どうしているかと思っていた頃、知り合いのケアマネさんより、ふじえさんの事で相談を受けたのです。


ふじえさんのご主人は先ほどお話したように既に亡くなっており、ご兄弟もお子さんも既に他界され、現在は身寄りのない状態でした。


そんな訳でこれまでは施設に入居されていたのですが、そこでの生活も長くなった為、別の安心できる場所を探していた際に、『さくまの家はどうか?』という話になったそうです。

しかしひとつ心配事がありました。ご本人の認知症が進んでいたため、さくまの家で対応できるかの判断が難しかったのです。

ですが、ご相談を受け実際にお会いした所、さくまを知人である事をしっかり認識されてくださったので、それならば…という事でご入居していただくことになりました。


一緒に暮らしてみてとても楽しかったです。多少認知症があっても、本来のお人柄はそのままで、明るくてよくおしゃべりをされる方でした。SMAPのキムタクが大好きというお茶目さをお持ちですが、若い頃はロシア大使館で働いていており、スパシーバの発音がとても本格的なのが印象的でした。『スパシーバ』でも『スパシーヴァ』でもどっちでも良いそうです。


そして出前を取るのが大好きです。ふじえさんが入居されてからはさくまの家ではお昼は出前を取ることが多くなりました。

こいのぼりの目を書いてと言ったら、そこに顔を描いてしまいました!
こいのぼりの目を書いてと言ったら、そこに顔を描いてしまいました!

できればずっといて欲しかったのですが、ひと月ちょっとした頃、次の施設への入居が決まり、現在は三鷹中央リハケアセンターにいらっしゃいます。


さくまの家を出入りされるヘルパーさんや医師の先生にも大変明るく振舞われ、皆を明るい気持ちにさせてくださる究極のポジティブ思考を持った方でした。


ところでさくまの家ではそれ以来、すっかりお昼に出前をとる習慣が残ってしまい、今でもお昼は出前にしちゃおうか?なんて日があります。

はじめての万床!


今年の春先ですが、さくまの家では入居者5名という、はじめての満床状態を経験しました。

それまではさくまの家にはふじえさんを含め既に4名の方がご入居されていましたが、ある日病院から依頼があり、諸事情により一泊だけ泊めて欲しい方がいるとのお話を頂きました。


当初その方は二階に入ってもらおうと思っていたのですが、いざ入居してもらおうと介護タクシーで搬送されて来た所、階段昇降機を使っても二階に移動するのが難しい状態だった為、急きょ一階に入居してもらうことになりました。

ご病気の事もあり、大変骨折しやすい体質になっていたのです。


そこで、既に一階に入居されていた方を、一時的に二階に移動して頂き(この時点でてんやわんやです!)そして介護タクシーの運転手の方にも手伝ってもらい、一階のリビングに入居してもらうことになりました。


この方もとてもおしゃべりが好きで、ずっとしゃべっている様な人でした。

お話しによると、日常生活中に突然骨折をされ、病院で検査をした所、そのまま入院生活となってしまったそうです。突然始まった病院生活が既に数か月も続いていたため、さくまの家に来た際は久しぶりに自宅のような生活感のある風景をご覧になられ、涙を流して喜んでいたとのことでした。


また、入院中の生活では常に食欲がなく、『病院の食事ははみんな同じ匂いがする』とおっしゃっていました。

そこで「食べたいものはありますか?」と尋ねた所『海苔巻きの様なものが食べたい』とのことでした。しかし、他の入居者の方の対応もあり、海苔巻の為の食材を買いに行く余裕がなかった為、ありあわせの材料だとお新香の様なものしかありませんでした。

「こんなものでも良いですか?」と尋ねた所『そういうものが食べたい』ということでしたので、早速海苔巻作りにチャレンジすることになりました。

出来上がったのは、漬物をご飯と海苔で巻いたシンプルなもので、付け合せにサツマイモの煮物をお出ししました。


そんな簡素な食事でも、家で食べる様な食事が久しぶりだったせいもあるのでしょうか、『美味しい』といって喜んで食べてくださいました。


そこで、調子に乗ったさくまは納豆巻きにもチャレンジしました。ところが、これは形が崩れてしまい、見た目も今一つのものが出来上がってしまいました。しかし、これも喜んで食べてくださったのです。


翌朝は作ったおにぎりを食べていただき、昼頃には再び病院に戻られました。


そんなあわただしい状態で対応するのもまた貴重な体験でした。

たった一晩だけでしたが、入居者の方に喜んでいただけたのが何よりです。


この時は確かに大変でしたが、あまり『大変』と口に出すと、本当に大変だったのだなと周囲の方に気を使われてしまい、逆に入居希望の方を紹介されなくなってしまうので、それはそれで難しい所ですですね。

だけどそんな事があってもさくまは痩せません!


忙しい日の夜はついついビール飲んじゃうんですよね。